「決める」から「引き出す」へ ファシリテーター体験で気づいた管理職の新しい役割
先日、ある企業でファシリテーター研修を実施しました。
今回は、その中で管理職の皆さんから寄せられた振り返りの声をご紹介します。
管理職として日々求められてきたのは、
「決めること」「答えを出すこと」でした。
そのため、研修でファシリテーター役を担当することになったとき、
正直なところ
「うまく場を回せるだろうか」
「まとめられなかったらどうしよう」
といった不安を感じた方も多かったようです。
しかし実際にファシリテーターを経験してみると、
これまでの管理職としての関わり方とは異なる、多くの気づきがありました。
まず感じたのは、
自分が思っていた以上に話しすぎていた ということです。
沈黙が生まれると、つい言葉を足してしまう。
意見が出ないと、自分が答えを示したくなる。
ところが、あえて「待つ」ことを意識してみると、
参加者はその沈黙の中で考えを整理し、
少しずつ自分の言葉で話し始めました。
沈黙は失敗ではなく、
考えるために必要な時間なのだと、初めて実感した瞬間でした。
また、ファシリテーターの役割は
「結論を導くこと」ではなく、
対話が深まるように支えることだという気づきもありました。
・「もう少し詳しく教えていただけますか」
・「そのとき、どんな思いがありましたか」
・「他の方はいかがでしょうか」
こうした短い問いかけ一つで、
場の空気や話の流れが大きく変わります。
問いかけには、人の考えを引き出す力があることを学びました。
さらに、
「場をコントロールしなければならない」
という思い込みがあったことにも気づかされました。
発言が偏らないだろうか。
議論がまとまらなかったらどうしよう。
そうした不安を手放し、参加者を信じて任せてみると、
互いに補い合いながら、自然と対話が進んでいきました。
任せるとは、ただ仕事を渡すことではなく、
相手の力を信じることなのだと感じたという声もありました。
研修後、参加者の皆さんは
対話の中で生まれた多くの意見を見返しながら、
自分の職場での会議や日常のコミュニケーションを振り返っていました。
「答えを急ぎすぎていなかっただろうか」
「もっと意見を引き出す関わり方ができたのではないか」
その中で、すぐに実践できそうな行動として挙がったのが、次のポイントです。
会議の冒頭で、結論を先に言わない
沈黙を恐れず、待つ
短い問いかけで、考えるきっかけをつくる
意見が出やすい雰囲気を整える
ファシリテーターの経験は、
管理職としての「聞き方」や「場づくり」を見直す、
大きな学びとなりました。
ファシリテーションに、特別な才能は必要ありません。
必要なのは、
「自分がすべてを背負わなくてもよい」という視点の転換です。
そのことに気づけたこと自体が、
管理職としての一つの成長なのではないでしょうか。
