ひとそだちの応援団 研修の現場から

人材育成のヒントやお役立ち情報を掲載しています。

毎年のことながら4月は新入社員研修が目白押しでした。
講師にとっては、とりわけ神経を使います。
全く白紙の新社会人に対して、
決して自信を無くさせてはいけないと強く感じているからです。
これからの明るい未来に向かって希望をもって進んでほしいからです。
おかげで講師たちは新入社員の皆さんから、
たくさんのプレゼント(学びや気づき)をもらうこともあります。
今回はその中の一部を紹介します。
今回から数回にわたってお届けします。

プレゼント その1
中小企業で、少人数の新入社員研修を担当したときのことです。
対象は全員20代前半の新社会人。
終日、「社会人としての基礎力」と「ビジネスマナー」について
お伝えしました。

長時間の研修で疲れたり飽きたりしないよう、
途中にはペアワークやコミュニケーションゲームも取り入れました。
少人数だったこともあり、一人ひとりの様子を丁寧に見ることができ、
細かなミスがあればその場で具体的に指摘し、
正解が導けた時には、全力でほめました。
講師としても、とてもやりがいを感じる時間でした。

研修の最後に、参加者一人ひとりに感想を話してもらいました。
「正しい言葉遣いを知れてよかったです」
「名刺交換の手順が分かりました」
「営業の仕組みが理解できました」
といった感想が続き、順調に進んでいたのですが・・・

最後の一人が、少し照れながらもこう言いました。
「講師の先生がすごく楽しそうに仕事をしていて、
仕事って楽しいものだと分かりました」

少し驚いて、「え?私が楽しそうだったのが印象に残ったの?」と聞き返すと、
満面の笑みでこう言ってくれました。

「はい!先生、本当に楽しそうでした。
私は正直、仕事って大変なもの、辛いものだと思っていました。
でも、先生が一日中楽しそうに仕事をしているのを見て、
好きな仕事をするってこんなに楽しいことなんだ、
と気づきました。ありがとうございました」

胸がいっぱいになりました。

研修終了後、新入社員と同じく
終日立ち会ってくださっていた人事担当の方が、
私に話しかけてくださいました。

「もしかしたら、私たち上司や先輩は、
新人たちに『仕事は大変なもの』『辛くてもやらなきゃいけないもの』という姿しか
見せられていなかったのかもしれません。
先生が全力で叱ったり、
全力でほめたりしてくれたように、
私たちも『この仕事って実は楽しいんだよ』
『この仕事にはこんなやりがいがあるんだよ』ということを、
職場の中で自然に伝えていくことが大切なんですね。
今日は大きな気づきをありがとうございました」

新入社員と向き合う時間は、
未来と向き合う時間でもあります。
だからこそ、こちらの姿勢や言葉一つひとつが、
彼らにとっての“仕事の原風景”になるのかもしれません。

そして、ふと思いました。
新入社員にとって、「仕事って楽しいんだよ」と伝えてくれる先輩は、
どれだけいるでしょうか?
気づけば、先輩たちが見せているのは
「大変さ」や「忙しさ」ばかりかもしれません。
もちろんそれも現実ではありますが、
そこに「楽しさ」や「やりがい」も含まれていること、
それを先輩が自分の背中で伝えていくことが、
何よりの関わり方なのではないか・・・
今回の研修を通じて、そんなことを学ばせてもらった気がします。

新入社員と接することで、既存の社員もまた、
新たな気づきや自分のあり方を見直す機会をもらっているのだと感じました。
教えることで学ぶ。
それを、まさに実感した一日でした。


~面談は“会話”からはじまる~
職場の風通しをよくしたい。
そんな思いから、社員との面談を始める経営者は少なくありません。
最近では「1on1ミーティング」と呼ばれ、
導入する企業も増えてきました。

1on1ミーティングの本来の目的は、
評価や指導の場ではなく、
社員の成長支援と信頼関係の構築にあります。
業務の悩みやキャリアの展望、日々の小さな気づきやモヤモヤなど、
普段の業務では話せないことを安心して話せる
「対話の場」をつくることが、何より大切です。

しかし、現場の声を聞くと、
「社長に本音は話せない」「何を話せばいいのかわからない」
といった声も多くあります。
たとえば、「最近どう?」と聞かれても、
いきなり本音を伝えるのは簡単ではありません。
「やりがいが感じられない」「非効率なやり方を見直したい」
と思っていても、それを社長に伝えるのは勇気が要るのです。

「なんでも話してほしい」と言われ、
思ったことを話したら怒られた。
そんな経験をした社員も実際にいます。

だからこそ大切なのが、「気楽に1on1」。
構えず、肩肘張らず、会話を楽しむように始めてみることです。
経営者自身がリラックスして問いかける。
社員が答えやすい雰囲気をつくる。
空気感、タイミング、表情、ちょっとした一言。
そんな積み重ねが、信頼と対話の土台になります。

「最近、売上が伸びないから面談しよう」
「文句が多い社員がいるから話を聞こう」
そんな目的では、かえって警戒を生みます。
1on1は“誰のための面談なのか”“何のために行うのか”が
明確でなければ、単なる雑談か、
逆に不信感を強めるだけの場になりかねません。

1on1は、名前の響きはカジュアルですが、
面談する側にも聴く力・問う力・関係性を築く力が求められます。

社員から「話しても何も変わらない」
「やっぱり社長には伝わらない」
と思われたら、むしろ逆効果です。
これまでの関係性があってこそ、
または、これから関係を築いていくきっかけとして、
時間をかけて信頼を育む対話の積み重ねが必要なのです。

あなたは、社員の声を聴く準備ができていますか?
1on1は、経営者自身が“聴く姿勢”を
磨くチャンスでもあります。
気楽に、でも真剣に。
それが、信頼される対話の第一歩です。


1on1ミーティングを成功させるカギは、「聴く力」です。

社員との信頼関係を築きたい、
でもどう声をかければいいかわからない。
本音を聞きたいのに、どこかで距離を感じてしまう・・・

そんな悩みをお持ちの経営者や管理職の方に向けて、
私たちは、「実践型1on1研修」を実施しています。
詳しくはコチラをクリック


4月になると、入社式や新入社員の話題があちこちで聞こえてきます。
この季節、親鸞上人の「立てば歩めの親心」という言葉が思い浮かびます。
赤ちゃんがはいはいを始めれば、次は立ってほしい。
伝い歩きをすれば、早く歩けるようになってほしい。
親は子の成長を心から願うものです。

新入社員研修に伺うと多くの経営者が
「せっかくご縁があって入社してくれた新入社員、早く一人前になって活躍してほしい!」
と期待を寄せています。
経営者の勉強会で「新入社員に1年後、2年後、3年後にどう成長してほしいか?」と話し合ったところ、
次のような意見が多く出ました。

1年目:まずは仕事を覚え、一人前にこなせるようになってほしい

2年目:少し視野を広げて、職場の改善や効率化を考えられるようになってほしい

3年目:さらにステップアップし、経営の視点を持って動けるようになってほしい

特に中小企業では、「1年目で即戦力、2年目で改善、3年目で経営参画」という
スピード感のある成長が切実に求められているようです。

もちろん、このスピードで成長できれば最高です。
でも、新入社員からすると「えっ、そんなに早く!?」と驚くかもしれません。
「早く一人前に」と言われても、
経営者と新入社員ではそのイメージに大きなギャップがあります。
一つの言葉の解釈が違えば、成長の時間感覚も違うのです。

そして何より、人の成長スピードはそれぞれ違います。
ある人は数年でグングン成長し、
ある人は10年後に大輪の花を咲かせるかもしれません。
桜にも、早咲きもあれば、ゆっくりじっくり咲く種類もあります。
どの桜も、それぞれのタイミングで美しく咲き誇るのです。

新入社員も同じ。
早く成長する人もいれば、時間をかけてじっくり伸びる人もいる。
せっかく縁あって入社したのですから、
それぞれのペースでの成長を楽しみながら見守ることが大切ではないでしょうか?

焦らず、じっくり、でも時には背中を押しながら——
そんな温かいまなざしで、新入社員の未来を一緒に育んでいきたいですね!


近年、事業承継という言葉を頻繁に目にするようになりました。
これは、経営者が築いてきた会社を次の世代に引き継ぐことを指します。
しかし、現場で研修を行う中で、よく目にするのが
「会社のことを全く知らない息子や親族に事業を承継させるケース」です。
もちろん、優秀な後継者が経営を担うことは大変良いことですが、
現場には課題が生じることも少なくありません。
その一つが「後継者と既存社員との隔たり」です。

この状況を見るたびに、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』の
有名なセリフが思い浮かびます。
「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」

例えば、大手企業を辞めて家業に戻り、
社長の意向でいきなり専務に就任する後継者がいます。
大手企業の風土は理解しているものの、
中小企業の文化には不慣れです。
それでも経営を引き継ごうと孤軍奮闘し、
これまでの知識を活かして会社改革に取り組みます。
新しい手法を導入し、幹部社員が知らない、
または実践できないスキルを駆使して戦略を立てていきます。

しかし、幹部社員にとっては戸惑いの連続です。
「こんなことも知らないのか?」「こんなこともできないのか?」と、
自分たちのスキルの低さを痛感させられる場面も出てきます。
後継者は懸命に経営に向き合いますが、
同じ感覚を持つ仲間がいないことに次第に不安を覚えるようになります。

あるとき、後継者に「社員との共通言語がないのでは?」と尋ねると、
「そうなんです…」とポツリと答えました。
その言葉から、
彼がどれだけ努力しながらも孤立しているかが伝わってきました。

後継者が現場に足を運ぶには、
単純なことのようで実は大きな勇気が必要です。
これまでのキャリアでは経験したことのない領域であり、
周囲の幹部にとっては当たり前のことでも、
後継者にとっては高いハードルとなります。
1回だけの訪問なら単なる挨拶で済みますが、
2回、3回と続くと「また後継者が来た」と社員が警戒することもあります。
後継者にとっては、
社員一人ひとりの情報がない状態でのコミュニケーションは、
まるで未知の領域に飛び込むようなものです。

このアウェイな雰囲気を変える鍵を握るのは現場の管理職です。
しかし、管理職自身がその重要性を認識していないことも多いのです。
「普通にやればいいじゃないか」と軽く流されることもあり、
共感力の低さが浮き彫りになります。

事業承継の問題は、社長と後継者だけの課題ではありません。
社員の気持ちに寄り添い、
同時に後継者の立場にも共感する管理職の役割は非常に大きいのです。
後継者を「雲の上のリーダー」にするのか、
現場と調和した経営者にするのかは、
既存の管理職の対応にかかっています。


会社では次々と問題が発生します。
もし、それを「社員が悪いからだ」と考えてしまえば、
経営者としての責任を放棄し、他責にしてしまうことになります。
しかし、ある社長は「受けて立つ」と決意しました。
その瞬間から、これまでのツケも回り、次々と難題が押し寄せてきました。

しかし社長の姿勢が変わると、
問題の捉え方や解決の糸口も変わってきました。
完璧な解決には至らなくとも、
一つひとつの課題に真正面から向き合い始めたのです。
これまで「見たくない」「聞きたくない」と避けていたことも、
「自分を鍛えてくれるトレーニングだ」と捉え直しました。

社長自身、「まるで100本ノックだな」と笑いながら、
1本、2本、3本、4本、5本……と次々にノックを受け続けました。

社長の心の声
そんな中で、ふとこぼれた社長の本音。

「時には優しいノックも欲しいなぁ。
毎回毎回、なかなか厳しいノックが飛んでくる。
もちろん、成長のためには手加減は許されないことは分かっているけど……
たまには柔らかいノックも期待しちゃうよ。」

しかし、そんな弱音を吐きつつも、
社長は楽しんでいるようでした。
次にどんなボールが飛んでくるのか、
少しワクワクする気持ちも芽生えてきたのです。
「死ぬほどつらい」と言いつつ、
「次はどんな課題が来るのだろう」と期待している自分もいる。

もちろん、厳しいノックを受けたときには、
先が見えず、食事ものどを通らないほど追い詰められることもあります。
しかし、見事にキャッチできたときには、
言葉にできないほどの達成感と幸福感に包まれるのです。

100本ノックの意味
社員の誰が、どんなボールを打ってくるかは分かりません。
しかし、ノックを「会社の問題解決のチャンス」と捉え直すことで、
見える景色は変わります。

人間関係も同じです。
自分にとって心地よい距離感でも、
相手には居心地が悪いことがあります。
その逆もしかりです。
飛んでくる打球を見極め、
適切な距離でグローブを差し出せば、
きっとキャッチできるはず。
ノックを取れないのは、
もしかするとボールとの距離感が合っていないのかもしれません。

100本ノックは、あくまで「自分の成長のため」。
自分が変われば、問題の見え方も変わり、取り組み方も変わり、
解決への道が開けてくるでしょう。

今、何本目のノックを受けているのか分かりません。
でも、確実にスキルが身についていることは間違いありません。

社長への100本ノック――それは、社員からの愛情なのかもしれませんね。


資料請求 / お問い合わせ

お電話でのお問い合せはこちら(受付時間 9:00 ~ 17:00)

083-928-5508